機械要素設計 試験問題            実施日 平成17年9月16日
                                                 

問題1. 次の文中の(カッコ)に下記AからMより適切なものを選びその記号を記入しなさい。 
                  
     SI単位は長さ<m>、(    )<kg>、時間<s>、電流<A>、温度<K>、(    )<mol>、光度<cd> の
     基本単位がメインとなって、それらを組み合わせることによって他の単位を表示できるようになっています。
     この7つの単位の中で唯一(    )だけは原器と云う物体による定義です。 
     力の単位(     )は以下に定義されます。
      (     )は、1キログラムの質量の物体に1メートル毎秒毎秒の加速度を与える力の大きさ。
                                                     
     A.粘度   B.物質量   C.エントロピー   D.重力加速度   E.質量   F.運動量  
     G.回転速度   H.ワット   J.ジュール  K.ニュートン  L.電気量   M.温度

    出題方針 SI単位の基本7つを出題しただけである。但し、5つの(カッコ)に入るのは質量・物質量・ニュートン
           の3語だけしかない。
                        意地悪く重複する落とし穴を掘ったら、落ちる落ちる・・・唖然としてしまった。
           質量は唯一の物体による定義である事の確認をしたかった。ニュートンについては「以下に定義」
           と書かれているのに関わらず定義部分に重力加速度を選択している学生が半数以上いた。
                                                  
問題2. φ52のシャフトにギヤを挿入したい。ギヤは購入品でφ52H9の公差だった。
    そこでシャフトはh7で製作したい。φ52に対してh7の許容差は幾らか。    (       )    
    また、h7で加工した場合表面精度は何s(最大高さ)以下が適切か。    (       )s以下   
    更に平行キー(沈みキー)で回転止めしたいが、キーの適切な大きさは幾らか。(幅   x高さ    ) 

    出題方針 H9とh7で(0 -0.030)と書いて欲しかったのだが、+0.030の解答が複数見られた。
           表面精度は本来参考書などでは1.6sとなっているが、3.2sでも正答とした。
           H7/h7が2発なのか3発なのか、本来は3発で指示すべきだが、北海道の現場では
           2発6.3sで指示している所が少なくない。現在の表面精度記号には何sかの指示が
           必要であるから、3.2s以下推奨で正解は1.6sであるが加工代を考えるとギリギリ
           に指導している。
  

問題3. 次の設問に答えなさい。
    同じ材質同士を滑らすと、かじりが発生し滑り難くなる場合がある。例えばS400の穴にS45Cの
    シャフトを入れるなどの対処が望ましい。但し、このままでは乱暴な設計になってしまう。
    今、S400のブロックに穴を加工しS45Cのシャフトを通して回転させたいのだが、
    その場合滑らかに回転させる為の方法を一つ以上述べよ。                       
       1.
       2.
       3.

     出題方針 オリジナル問題である。 
            軸と穴の公差を甘くする・オイルアップ・メタル軸受け・ベアリング と方法を
            連鎖して欲しかった。
            軸がS45Cである事からか焼入れの解答もあって少し安心した。
            但し、滑らかにと言う条件にはマッチしていないので正答とはしていない。
            グリス用溝加工する所まで書いている人がいて「やた!」と思ったのだが、
            ベアリングに結びついてなかったりして、満点は数名だった。      

       
問題4. M12ねじでW=200kgfの荷重を押し上げるためのナットを回すトルクTを求め、
    更に、L=25cmのスパナで回すのに必要な力Fを求めよ。
    但し、M12ねじはP=0.175cm、d2=1.086cm、B=1.9cm、β=60°、μ=0.15 とする。
                            < 機械要素設計法 P72 図2.15を参照 >

                                   T =                 

                                   F = 
   
    出題方針 機械要素には無論計算がつきものであり、本来であれば何も見ないまま
           個人の実力を測るべきであるのだと思う。
           しかしながら、自分達が実務として計算書を作成する場合など、何らかの
           資料や書式、参考書などを片手に作成する。頭の中に常に計算全体の
           式の数々が入っている訳ではない(専門会社等は別として)。
           よって、計算問題は教科書の例題の数値を変更したものとした。
           4時間の講義1度だけですぐに計算式全て覚えられる訳もあるまいと
           考える。式を計算し切る事が求められるのであると言う観点から
           教科書からの出題とした。
           それでも正答は半分以下となった。少し残念である。                     
          
問題5. 次の文中の(カッコ)に適切な語句を入れよ。

    丸棒の一端を固定し、他端をねじりモーメントTでねじる場合、ねじりによって丸棒断面に
    生ずるねじり応力τは半径に比例し丸棒の表面で(       )となり、その大きさは
    d=丸棒の直径<cm> τ=ねじり応力<kgf/平方cm> とすると

     τ=(         )<kgf/平方cm> または  T=(        )<kgf・cm>
     
    ねじりモーメントTが同一ならねじり応力τは直径dの3乗に(       )するから直径が10%細く
    なると応力は(       )%増しになる。
    また、ねじれ角θは l=丸棒の長さ<cm> G=横弾性係数<kgf/平方cm> とすると

     θ=(         )<rad>

    で与えられ、これからねじれ角θは長さlおよびねじりモーメントTに比例し、Gに(       )する。
    特に直径dの4乗に(       )するから、直径のわずかな変化でもねじれ角は大きく変化する。
    すなわち、10%の直径の減少は(     )%のねじれ角の増大を意味する。
        
    段付き軸で注意しなくてはいけないのは、各コーナーにおける(        )である。
    荷重条件が厳しく加工Rが小さい場合、それは大きくなり軸の破壊を招く恐れがある。 

    出題方針 軸の理論を問題にしようと思って試行錯誤したが、結局ねじりの力学を
           出題する事にした。
           軸の直径の大小がどう言う関係にあるかを再認識して欲しかった。
           ここで「逆比例」が3回出て来るが、問題1と同様、迷った学生も若干見られた。
           殆ど正答できるか、白紙に近いかで二分された問題となった。
           一番正答率の低かったのが最後の「集中応力」であった。
           ここはねじりではなく段付軸から持って来たので出題としては簡単と思って
           出したのだが、案外であった。
            
                                               
 問題6. 次の文中(カッコ)に適切な語句を入れよ。

    一般に深溝玉軸受けはラジアル荷重と(        )荷重を同時に受ける事が出来る。
    よって最もポピュラーな軸受けとして知られるが、内部の球は点接触で回転するため、
    より大きな荷重を受ける場合には線接触の(         )軸受けが用いられる。
    しかし、これはラジアル荷重には対応するが(         )荷重には対応しない。
    その場合には(        )軸受けを用いるのが良い。但し、方向性に注意を要す。
    コンベアのヘッドプーリなどのように軸芯の変動が見込まれる場合には組立の容易さ
    と合わせて(        )ユニットが良く使われる。
    温度などの変動により軸の伸び等が懸念される場合、更に荷重が大きい場合には円筒ころ軸受け
    を使用した(          )を使うなど用途によって様々な選択をする事になる。
    近年機械の小型化、高速化によりメタル軸受けを針のようなローラーを使う(          )
     に変更するものが増えている。しかしこの軸受けは(        )荷重に対応しないので
     わりと使用方法が難しいのも事実である。
     メタル軸受けは低価格であり設計も小型化できる利点を持っている。
     低速の場合、転がり軸受けの転がり抵抗に対しグリース給油などの不完全給油の場合
     (      摩擦または     摩擦)と呼ばれ摩擦係数は0.1〜0.02程度となる。
     しかし、速度が増加すると油圧が次第に高まり軸は油膜の上に浮かび上がるようになる。
     この状態が(          )で、軸と軸受けは直接接触せず油膜を介して接するため、
     摩擦は油膜の示す流体摩擦となり0.007〜0.01程度となる。      

    出題方針 上2/3はオリジナルな転がり軸受けの問題で、下1/3がメタル軸受けで教科書
           からの出題であった。
           上から スラスト・円筒ころ・スラスト・円錐ころ・ピロー・プランマブロック・針状ころ
           軸受け・スラスト・半流体/混合・完全流体潤滑 を正答とした。
           スラストはアキシャルでも良い。ピローは軸受けでも良い。
           ピロー形ユニットとプランマブロックについて時間をかけて講義したつもりだが
           現物も見ていないからか正答数は少なかった。
           円錐ころに対してアンギュラと回答する人が数人いた。また、スラスト(軸受け)と
           言う回答があり迷った。文脈からそう取ってもおかしくはないので正答とした。
           ニードルベアリングについては問題の出し方をミスったような気がする。
           正答数が多かったのであるが、この後にスラスト荷重を持って来たのはあんまり
           意味がなかった。問題を自分で作ると反省しごくである。
        
                
問題7. 右図に示すように歯車Z1、Z2、Z3,、Z5をそれぞれの歯数で組み合わせた場合、出力軸の回転数は幾らか答えよ。
    また、出力軸を移動してZ4とZ6を噛み合わせた場合はそれぞれ幾らか。
    但し、モーターの回転数Zは<1500rpm>とする。

                                           

 
         Z3とZ5の噛み合わせの場合  出力軸の回転数は      <rpm>  

         Z4とZ6の噛み合わせの場合  出力軸の回転数は      <rpm>  

    出題方針 点数を与える為に簡単な計算問題として作ってみたのだが・・・これがまた逆計算の
           雨嵐。減速問題なのに6000rpmとか書いてあったりしてホトホト参った。
           中には全く白紙の人もいて頭を抱える結果となった。
           理系か文系かの性格の違いが顕著に現れた問題となってしまった。
           丹念に数回比を追うだけだと思ったのだが、手をつけた痕跡すらないものもある。
           歯車問題でかみ合いや歯面強度では難しかろうと、モジュールすら関係しない
           問題としたのだが、これで白紙なら何を出せばよいのか困ってしまう。
                                                   
問題8. 「物体AをB点からC点に移動しなさい」と言う機械設計の依頼を受けた。
    計画する上で必要な事は何か。最低3点以上箇条書きにしなさい。多い程良いが重複は不可とする。(評価数最大10個)
     例:完成期日(開発期間)は何時か。等、受注した立場で考えなさい。
                                                       
     出題方針 この問いかけは私の最初の講義で1回、他の講義内でも1回、最終8回目講義でも行った。
           で、あるから、書けない人は本当に私の講義を聞いていないと言う事である。
           物体Aは固体なのか液体なのか気体なのか何なのか。
           B点、C点の距離はいかほどか。方法は滑らすのか飛ばすのかコンベアにするのか。
           予算はどれくらいで、扱う人間は選任者かおばちゃんか一般人か・・・等々。
           この問いかけには条件が全く無いので、その条件を考えられるだけ考えさせるのが
           目的であった。
           当初から学生には「機械設計を志す」事を講義条件として話をしてきた。
           第2回目の「基準」では設計での基準から話を進めている。
           自分が設計するとして、この問いでは具体的に何も分らないから、依頼主から様々な
           情報を得る必要がある。そこをまとめる事が出来るかを問うたのであるが、満点も
           数名いたが(最大採点数10個)殆ど書けない人もいて、無念であった。