軸 |
軸に掛かる力としては、ねじり、曲げ、引っ張り、圧縮、せん断などである。
曲げ、せん断などは梁そのものと同じ扱いとなる。
ここでの軸は回転軸であるから、ねじりについて下図に述べる。
fig1
軸に長さ L (cm)の腕をつけ、先端に力 F (kgf)を加えてねじると
ねじり力 T は
T=FL (kgf・cm)
であらわされる。この T を ねじりモーメント 又は トルク と言う。
今、fig2 のような軸に対するねじれを考える。
fig2
壁から突き出た直径 d (cm) で長さ L (cm) の丸棒にトルク T (kgf・cm)
の力が働いたとする。
fig3
その場合ねじりによって丸棒断面には fig3 に示すように ねじり応力 τ
(kgf/cm2) が半径に比例して生ずる。
τ は丸棒の表面で最大となり、その大きさは
τ=16/πd3 ・ T (kgf/cm2)
又は
T=πd3/16 ・ τ (kgf・cm)
すなわち、ねじりモーメント T が同一なら、ねじり応力 τ は直径 d の
3乗に逆比例するから、
直径が10%細くなると応力は30%増しになる。
丸棒の中心の応力は0(ゼロ)であるから、中心部付近は力を受け持たない。
よって、座屈を生じるほど肉薄でなければ、中空軸が有効である。
中空軸の外形を D (cm) 内径を d (cm) とすると
τ=16D/π(D4-d4)・T (kgf/cm2)
で与えられる。
fig2 において θ はねじれ角で
G=横弾性係数 (kgf/cm2) とすると
θ=32L/πd4G・T (rad)
で与えられる。
これより、ねじれ角 θ は長さ L 及びねじりモーメント T に比例し、
横弾性係数 G に逆比例する。
特に、直径 d の4乗に逆比例するから、直径のわずかな変化でも
ねじれ角は大きく変化する。
10%の直径の減少は、40%のねじれ角の増大を意味する。
☆丸棒表面でねじり応力 τ が最も大きくなるため、軸表面に傷を
つけた場合、破壊の大きな要因になる事もある。
知り合いの事務所に電話が入った。モーター軸が「落下」したと言う。
有り得ない事なので後日詳細を聞いた。
モーター軸に取り付けたスプロケットをとがり先のセットスクリューで
止めてあったと言う。
そのセットスクリューが緩み、軸の周りをVノッチの如く削り取り
そこから見事に破談していたという。
まるでシャーピンのごときである。
たまたまチェーンテンションがかなり過酷にかかっていた事が
災いしたらしいが、以後セットスクリューにとがり先を用いる事は
同業の間でご法度になったものである。
構造の特殊性もあるのだが、リスクは避けたいのが人情である。
主な材料の横弾性係数
材質 | 鋼 | 鋳鉄 | 黄銅 | アルミニウム | プラスチック |
G×103 (kgf/cm2) | 830 | 350 | 390 | 260 | 80 |